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『マクベス』97/10/16


※紀伊国屋ホール
※19:00〜
※全席指定 ￥6,300-
※Ｑ列１９番
※マクベス：段田安則、マクベス夫人：南果歩
  マクダフ：大高洋夫、マクダフ夫人・ヘカテ・フリーアンス：木内里美、
  ダンカン：山崎清介、バンクォー：吉見一豊、マルカム：久松信美、
  ロス：錦部高寿、レノックス：八嶋智人
※魔女：福士恵二、高田恵篤、中村亮
※マクダフの子供：小山勝広、木下慧人(ダブルキャスト)
※演出：アレキサンドル・ダリエ
※翻訳：松岡和子

 
『マクベス』行ってきました。
なかなか実体のある２人で、面白かった〜(^^)

もともとは、いつもＴＶで見かけている段田さんが、
舞台になるとどんな感じになるのだろう？という程度の
ミーハー心で、見に行きたいと思っただけだったんです。
でも、目的のだったはずの段田さんについては、地味な印象だったかも。
今回のマクベス自体が、割りと普通の人である設定だからかな？
段々と狂気に追いかけられるようになっていく様はさすがだったけど、
さしてどうこうとは思いませんでした。

しかし、今日の収穫は、南果歩さんのマクベス夫人！！
私は今まで、マクベスを唆した毒婦である部分を
強調した芝居しか観た事が無かったので、新鮮だったんですよぉ〜。
・・・って、舞台では、佐藤オリエのしか観た事無いけど(^^;

マクベスが最初に３人の魔女に会った後、自分が帰り着くより早く、
手紙を書いてそのことを夫人に伝えるでしょう？
それを読んだ時の果歩さんの演技が、本当に可愛くって。
「お前には早く伝えたかった」
「これはまだ、秘密だよ」などのセリフに心躍らせる様は、
まだ子供の居ない初々しい夫婦だな、という感じ。
マクベスにしたって、どうせすぐに帰ってくるというのに
「わざわざ」手紙なんか出したという雰囲気が強調されていて、
「てめぇら、新婚か？」とか突っ込みを入れたくなるような普通さ加減。
この辺りで既に、なぜかこの２人に好感度大になってしまって。

そんな関係が最初にしっかり打ち出されていたために、
その後、彼の将来が自分の夢のように錯覚した夫人が、
すっかり舞い上がってしまい、旦那の尻を叩き始めるという経過も、
すんなりと受け止められたかも。
善悪の判断までつかなくなるかどうかはともかくとしても、
サラリーマン夫婦にだって有りそうな話だなぁ、って思ったんです。

その後も走り続けて、
自分たちが責められる側になってみて始めて、何をしてきたかに気付く。
でも、気付いた時にはもう、夫に対する信頼も愛情も失っていて、
目前に見えるは死だけ。そして、それを選んでしまう。
そんな、ごくごくありがちな女性像が鮮明に表現されていて、とても良かったです。
ただ、もしかすると今日は、「自殺した」という表現はなかったかも。
私は、夫人は自殺だという表現が、原作のどこかにあったと
知っているから、そう思うだけなのかもしれないですけど、
その辺りは、ちょっと自信がないです。

でも、彼女の演技をはっきりと見せられた事で、私には、
「舞い上がってしまった夫人を抑えられる度量さえマクベスにあれば、
たったそれだけの事で、悲劇が防げたんだろうに」という、感想が残りました。
だからマクベスに関しては。「弱いな」って印象。
でもそれって、もしかしたら、今回の演出意図だったのかも。
自分自身が先に魔術に幻惑されてしまったという理由はあるものの、
「男が弱くなってしまったために起こった悲劇」という考えると、
『マクベス』って、とても現代的なテーマだったんだな……という感じです。


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